好きな本のタイトルを作字してみた ~三島由紀夫「天人五衰」~

今回は三島由紀夫の遺作「豊饒の海」第4部の「天人五衰」というタイトルを作字してみました。「豊饒の海」は『浜松中納言物語』を典拠とした夢と転生の物語で、『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の全4巻から成ります。この「天人五衰」を入稿した日に三島事件があり、三島由紀夫は45歳の人生を終えます。この長編は三島由紀夫の全作品の美学が結実されたような小説です。

作字のポイント

天人五衰という意味は仏教用語で、六道最高位の天界にいる天人が、長寿の末に迎える死の直前に現れる5つの兆しのことだそうです。 この小説の中では安永透が結末を迎えるまでの、零落した様を表しています。主人公の本多が天女の夢を見る場面があるので、天女の絵と組み合わせ、儚い現世のイメージを表しました。浮遊して散りじりになる様子を表現したタイポグラフィがポイントです。

今回参考にした本

作字をする時には参考をまず探します。こんな時に役立つ本が「作字百景」。描き文字の作家さん達が自分の作品を載せています。作家さんは普段はSNSで発表していることも多いので、まめにチェックするようにしています。中にはほぼ毎日作字している方もいて、意識の高さに驚きます。もっと上手くなれたらいいのになと思いながら見ています。。

今回制作したタイポグラフィはSOZAI-PORTという素材サイトで無料ダウンロード可能です。大事な本の汚れ防止として、是非使ってみてください!

三島由紀夫に学ぶ行動の美学

1970年に「行動学入門」という著作を出版しています。行動の定義とは目的に向かって突進することであり、逆を言えば一度走り出したらやめることが出来ないのが、行動の怖いところと指摘しています。
三島由紀夫は当時行動的な小説家として、常にマスメディアの注目を浴びていました。その1つが東大生との討論会”東大全共闘”です。最近もドキュメンタリー映画が公開されていました。三島由紀夫 VS 東大全共闘

例えばこうした討論会は多く見積もっても4時間ばかりの時間だが、小説家としての地味なデスクワークには、一般的には関心が示されない。行動は迅速であり、思索的な仕事、芸術的な仕事には非常に長い時間がかかると言っていたことが、なるほどと思いました。
行動と思索、肉体と精神の問題に思いを巡らせてきた三島由紀夫の行動力を見習いたいところです。

天人五衰

著:三島由紀夫
出版社:新潮文庫
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