本を片手にちょっと休もう ~好きな本のタイトルを作字してみた~

ヘルマン・ヘッセ「車輪の下」のタイトルロゴを作ってみました

小さな頃好きだった本は、学校の課題図書がきっかけだったことも多いのですが、その1冊がヘルマン・ヘッセの「車輪の下」があります。今思えばこの本をきっかけとして、小説の面白さや奥深さを知った気がします。この本の主人公は少年ですが、自分と境遇も環境も全く違いながら、後々まで記憶に残る小説となったのは、時代や国境を超えた普遍的なテーマを取り扱っているからかもしれません。

どんな本か触りだけ言うと、主人公のハンスは周囲の期待を一身に背負い、小さな村からの唯一の受験生として、難関と言われる州試験を受かります。大人達からの期待に応えようと少年らしい欲求は抑え、果てに心が疲弊していく様を描いています。ヘッセの自伝的小説でもあるそうです。

昔から好きな本は思い入れが強いし、好きなものを自由にデザインするって、デザイナーの特権だなあってことで、今回はタイトルの作字に挑戦してみました。

作字のポイント

ハンスが聖書の教えと自由な精神性の狭間で、葛藤する場面があります。また身勝手な大人達の期待を十字架に喩え、文字中の「十」をポイントにしました。タイトル「車輪の下」の”車輪”は、少年の心を踏み潰す社会の仕組みを表しているので、タイポグラフィは太めでシステマチックに表現してみました。普段一から作字ってそんなにしないので、なかなか難しい..タイポグラフィの上手いデザイナーさんの本など見て研究しました。
 

ヘッセ流・心の癒し方

為になる書評は世に沢山あるので・・ここでは仕事や人生に疲れた時のヘッセ流・心の癒し方を紹介します。28歳で「車輪の下」を出版した後、職を転々としながら名作を生み出し、ドイツ文学の礎を築き上げたヘッセですが、生来の憂鬱症に悩まされていたそうです。療養の一環として水彩画を描き、庭仕事や昆虫採集など自然を敬うことで心のバランスを保ちました。特に水彩画は独特のタッチと豊かな色彩を持ち、美しい作品を数多く残しました。人間の精神の幸福を問う作品を著し続けたヘッセ。少年時代に立ち返り、自然への郷愁の中で一生を過ごすことが、ヘッセが望んだ幸福の一つだったのでしょうか。

車輪の下

車輪の下

著:ヘルマン・ヘッセ
翻訳:実吉 捷郎
出版社:岩波書店
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